極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
「そう、世界一有名なイギリス秘密情報部のエージェント。ボランジェは、ジェームズ・ボンドが女性を口説く時の秘密兵器だね」

 翔一郎さんがヘーゼル色の瞳を細めておもしろそうにわたしを見つめた。

「また、そうやってからかう!」

 ちょっとしたジョークなのにドキドキしてしまう。大人の男性の余裕の微笑みに翻弄される。

「からかってはいないけどね」
「もう……。それはともかく、朝からこんな贅沢していいんでしょうか。交換条件とはいっても、わたし、本物の婚約者じゃないのに」

 なんとか話題を変えようと少し気になっていたことを聞いてみた。
 翔一郎さんはかすかに苦笑いをしたあと、シャンパンをお代わりした。給仕はおらず、自分で注いでいる。

「きみは?」
「わたしはまだ結構です」
「ノンヴィンテージだから、そんなにかしこまらなくてもいい。それにしても、女性のクルーズの一人旅は珍しいな。今はそうでもないのか?」

 豪華な朝食を食べながら、わたしはうなずいた。

「そうですね、まだ少ないと思います。わたしの場合は友人を誘ったんですけど、断られてしまって。それでも乗りたかったので、一人で」
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