極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
「そうだったんだな。友達は船が苦手だった?」
「いえ、そういうわけじゃなくて、せっかくの海外旅行ならもっと観光したいとかビーチに行きたいとか……」
「ああ」
「あと船旅って、老後の楽しみというイメージも強いみたいで。会社を定年退職した夫婦がゆったりとした時間を過ごす旅ってかんじかしら」

 同じ船旅でももっと寄港地が多くて華やかなクルーズなら考えると言ってくれた友人もいたけれど、それも少数派だ。

「クルーズ船の乗客は確かに年齢層が高いな」
「そうですよね」
「だが、船旅のよさを若い世代にももっと広められたらいいと私も思う」
「え……」

 まじまじと翔一郎さんを見てしまった。わたしの心の中を読まれたような気がした。

 昨夜、彼にクルーズは初めてかと聞かれた。

『いえ……。実は子供のころ、一度家族で大きな船に乗ったことがあって……。細かいことは覚えていないんですけど』

 わたしはそう答えたけれど、本当はかなり覚えている。

 当時わたしは五、六歳で、乗ったのはやはりこの北大西洋航路だった。父がロンドンで仕事をしていて、夏休みに家族三人でニューヨークに遊びに行ったのだ。
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