極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
「お若い人はいいわねえ。これからも仲良くね」

 上品な奥様に英語で話しかけられる。
 思わぬ言葉に焦ってしまった。

「え、あ、あの」
「ありがとうございます。やっと巡りあえた運命の女性です。大切にします」

 にこやかに答える翔一郎さん。
 まわりの人たちから軽く拍手がわいた。

「婚約おめでとう」
「末永くお幸せにね」
 
 あれ、もしかしてわたしたち目立ってる!?

 棒立ちになってしまったわたしに、翔一郎さんがまた甘い声でささやいた。

「鞠香、船首側の施設も見に行こうか。映画館やバー、フィットネスセンターがある」
「映画館! リニューアルで新しくできた星空映画館ですよね。見に行きたい!」

 注目を浴びて緊張した気分が一瞬で切り替わった。ほんと我ながら単純というか、欲望に忠実というか……。

「上映は暗くなってからだぞ」
「わかってます。でも、憧れてたんです。雰囲気だけでも見てみたいの」
「ああ。夜になったら、また改めて映画を観に来よう」

 翔一郎さんは甘い態度を崩さない。
 人の目があってもなくても熱愛中の恋人役を演じつづける根性がすごい。役者だわ……。
 きっとわたしたちは誰が見ても、イチャイチャしている若い恋人に見えるだろう。
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