極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 ……もしかしなくてもこのクルーズ中、彼以外の人と一つのソファーで密着するわけにはいかないわよね。

 ぼんやりとした憧れに現実感が加わって、急に心臓がバクバクしてきた。

「どうした?」

 突然暑くなって顔を手うちわで扇ぎはじめたわたしに、翔一郎さんが不審そうな視線を向けた。

「な、と、特に何も!」
「あやしいな」

 翔一郎さんの整った顔がのぞきこんでくる。

「近いから!」

 お願いだから、これ以上どきどきさせないで。

 わたしが何かを照れていると察したのか彼はニヤニヤとして、またキスしてきた。今度は頬だ。
 なんだか唇に近づいてきているのが怖いんですけど。あんな観衆の中でキスしておいて今さらだけど、恥ずかしいから!

「翔一郎さん! 人前ではだめです」
「へえ、人前じゃなければいいのかな?」
「は、ええ!?」

 遊びなれた男の人に振り回されてもいいことなんかない。落ち着こう。
 これ以上甘い罠にはまらないように、心にブレーキをかけて。





 そのあとフィットネスセンターや美容院、スパなどを見学してから、すぐ下の階へ移動した。

 下の階には船内で一番大きな屋外プールがある。
 いいお天気だ。真っ白なデッキにブルーのプールが映えてまぶしい。
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