極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 ぐるっとプールを一周して、パラソルの陰になった椅子に座った。
 翔一郎さんが飲み物を取りに行ってくれる。バーでグラスを二つ受け取ると、すぐにきびすを返した。

 けれど、その翔一郎さんを引きとめる声がかかった。

「海堂様もお散歩ですの? よろしければご一緒にお茶でもいかがですか?」

 あれは――ウェルカムパーティーでわたしにぶつかってきた日本人女性だ。たしかジュエリーオークラという宝石商のご令嬢だと言われていた。
 二十代前半と思われる彼女は、白いワンピースにつばの広い帽子をかぶって上品に微笑んでいる。

 昨夜の婚約発表を目の当たりにしながら、まだ翔一郎さんのことをあきらめていないみたい。

「もしや、ここはわたしの出番なのでは?」

 立ちあがって翔一郎さんのもとに行こうとしたら、翔一郎さんがわたしに手を振ってきた。
 わたしもなんとなく微笑みながら小さく手を振り返すと、彼が女性をいなす声が聞こえてきた。
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