極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 長い休みには必ず家族旅行に出かけていたけれど、クルーズは初めてだ。
 ハネムーンはクルーズ旅行だったという船旅好きな両親。わたしがある程度成長したので、そろそろ船に……ということで、父の夏季休暇を使って連れてきてくれた。

『ママ、あそこに子供がいる!』

 翌朝カジュアルなブッフェで朝食をとっていると、少し離れたテーブルに家族連れがいた。
 子供は子供の気配を目ざとく見つけ出す。わたしもそうで、昨晩は大人しく両親のディナーに付き合ったんだから今日は子供同士で遊びたい、という気持ちでいっぱいだったのだ。

『ねえ、行ってみてもいい?』
『じゃあ、パパが一緒に行って、あのお兄ちゃんたちが鞠香と遊んでくれるか聞いてみよう』

 そこには十歳くらいの男の子と、わたしよりもちょっと年下に見える子がいた。よく似ているから兄弟なのだろう。
 兄と思われる男の子はむすっとした顔で、駆け寄るわたしを見ている。
 弟のほうは兄のシャツをつかんで、そのうしろに隠れていた。

『やあ、おはようございます。こんなところでお目にかかれるなんて偶然の幸運ですね』

 父が椅子に座っている男性に声をかけた。
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