極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
『ショウおにいちゃまはなんでもできるのに、なぜかけっこが苦手なの?』

 ある日、ふと思いついてショウを見上げると、ショウは痛いところを突かれたような顔をした。
 自分を落ち着かせるようにふうっと息を吐くと、しゃがみこんで真っ直ぐにわたしの目を見る。

『マリカはピアノが上手な男よりも、かけっこの速い子が好き?』
『うーん、わかんない』

 かっこよくて、ピアノもヴァイオリンも絵を描くのも上手な憧れのお兄さん。
 だけど、ショウにも不得意な分野があった。運動が少し苦手だったのだ。

 今考えると残酷な言い方だけど、当時は純粋にショウにできないことがあるのが不思議で、幼いわたしは深く考えずに質問してしまった。
 ショウはわたしの両手を握って、じっと見つめてくる。

『マリカがそのほうがよければ、僕はスポーツもがんばるよ。絶対にクラスで一番速く走れるようになる』
『うん!』
『そうしたら、マリカは大きくなっても僕と一緒にいてくれる?』
『大きくなっても?』

 初めて会った時の不愛想な様子が嘘のように、ショウは優しいまなざしで笑った。
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