極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 振り向くと、翔一郎さんが案の定ちょっと怒ったような顔で立っていた。
 でも、その視線はわたしではなく、バーカウンターの向こう側を見ている。

「……将生」

 敬称もつけずに将生さんを呼び捨てる翔一郎さん。
 それに、なぜ翔一郎さんがプールサイドバーのバーテンダーの名前を知っているの?

 将生さんは相変わらず愛想のよい笑顔だ。

「気分がよくなったからさ、気晴らしに出てきたんだよ。――兄さん」
「…………?」

 兄さん。
『兄さん』って、兄と弟の兄のほうのことよね?

「…………!?」

 つまり、ええぇぇ?
 将生さんは、翔一郎さんの弟ってこと!?





「仕事から戻ってみたら、おまえがバーテンダーの真似事をしているし、そのうえ鞠香と一緒にいるなどとわけがわからん」

 わたしと話す時よりもさらに気楽な雰囲気の翔一郎さんを見ていると、やっぱり兄弟なんだという実感がわいてきた。
 言われてみれば顔立ちも似ている気がする。将生さんの瞳の色も翔一郎さんと同じ明るいヘーゼル色だ。

「まあまあ。いいじゃない、せっかく仕事から解放された休暇なんだし」
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