極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 翔一郎さんがスパークリングウォーターを飲みながら、目をすがめて将生さんを見た。

「まあね、時差ボケで疲れていたのは確か。でも、やっぱり出席しておけばよかったなあ」

 急に将生さんが相好を崩してにやにやしはじめた。わたしと翔一郎さんをためつすがめつ眺めてくる。

「すごい事件があったんだって? 海堂家の御曹司が花嫁になる女性を紹介して、観衆の前で情熱的にキスしたって聞いたけど、本当?」
「…………」
「いつもクールな兄さんが! 情熱的に! 見たかったなあ」

 それって、わたしのことよね……?

 頬がほてるのがわかった。おおかた真っ赤になっているはずだ。
 思わずうつむいてテーブルを見つめると、食べかけのストロベリーアイスが綺麗な器の中でとろりと溶けた。

「おい、鞠香をからかうな」

 翔一郎さんが盛大に顔をしかめた。

 恥ずかしいけど、契約の婚約者としての役割はちゃんと果たさないと。……と思ってから、はたと気づいた。

 あれ? 翔一郎さんの弟や会社の人にまで、恋人のふりをする必要があるのかしら。
 わたしの役目は翔一郎さんの休暇中の虫よけ、もとい女性よけよね?
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