極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 跡継ぎを作るために奥さんとは別の女性と関係しなければならないなんて、いつの時代の話なんだって思ってしまう。『海運王』も大変なんだなあ……。

「昔の流儀だ。私が跡を継ぐことになっても、そんなことは絶対にしないから安心してほしい」
「安心? なんでわたしが安心するんです?」
「いや……、まあ、今はそれはいい。将生の話だが、そんなわけで正式な妻から生まれた将生を担ぎたい一派があるということだ」

 つまり海堂ホールディングスの中には有能で実績を上げてきた翔一郎さんを推す派閥と、まだ若いけれど本妻の血筋である将生さんを正式な後継者にしたい派閥があるらしい。

「将生のそばにはいつも誰かしら派閥の者がいる。危険な目に遭わないようにという警護が建前だが、妙なことを吹きこまれないよう警戒し監視しているのだろう」
「将生さんも翔一郎さんも大変なんですね。わたしから見たらとても仲のいい兄弟なのに、まわりからそんな扱いをされてしまうなんて」
「ありがとう。そう言ってもらえてうれしいよ」

 翔一郎さんがふっと笑った。
 含むところのない素直な笑顔。
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