極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 わたし、彼の笑顔の違いが少しずつわかるようになってきてしまっている気がする……。

「だが、私は将生が望むのなら、副社長の椅子――海堂ホールディングスの後継者の地位は譲ってもいいと思っているんだ。そして、弟の補佐として海堂グループを支えていければ、それでいい。こんな野心のない男はいやか?」

 軽く唇をつりあげて冗談めかして問いかける大人の余裕の奥に隠された、ちょっと不安げな表情。
 傲慢なくらい自信に満ちて見えるのに、こんな顔もするのね。

「いいえ、弟さん思いだし、会社に対する責任感もあって素敵だと思います」
「よかった」

 また少年のような笑みを浮かべる。
 心からうれしそうで戸惑ってしまう。わたしの感想なんて、そんなに喜んでもらえる価値があるとは思えないのに。

「ただ問題は、将生が後継者になりたいとは思っていないということだ。あいつは少しいい加減に見えるだろう?」
「いい加減というか、明るくて気さくなイメージかしら」
「あれは軽薄なふりをして、自分を押しあげようとしている者に後継者候補失格だと思わせたいんだ。忠誠を誓う山内のような部下にもあきらめさせようとしている」
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