極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 ……でも、なんだかすごく恥ずかしくなってきてしまったのだ。

 一面の星空の下、あのふかふかしたソファーで翔一郎さんと身を寄せあって数時間を過ごすなんて。たぶんどきどきしすぎて心臓が破裂する!

「じゃあ、また日を改めて行こうか」
「はい!」

 とりあえず映画は先送りにして、わたしたちは劇場に来た。
 数百人もの観客を収容できる大きな劇場だ。シックな紅色の座席がすり鉢状に舞台を囲んでいる。
 わたしと翔一郎さんはステージに近い隣り合った席で、本場ロンドンのミュージカルスターの本格的な歌とダンスを観た。

 ――だけど。
 ステージに視線を向けたままの翔一郎さんがわたしの手を握ってくるから、やっぱりどきどきしてしまって、せっかくのミュージカルがあまり頭に入ってこない。

「翔一郎さん、手を離してください」
「ん? 恋人ならあまり離れているのも不自然だろう?」

 翔一郎さんの人差し指がわたしの手の甲をつうっと撫でてから、わたしの指を一本一本たどっていく。
 親指、人差し指、中指、薬指、小指。

 羽毛でさわられているような軽いタッチだけど、決して離れない。
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