極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 指の節、指先、そして指の股。
 繰り返される動きがなんだか色っぽくて、意識が翔一郎さんの指の感覚に集中してしまう。

「…………」

 つながっているのは、わたしの手の表面と翔一郎さんの指先だけ。
 たったそれだけなのに、キスされている時以上に体が密着しているように感じて。

 翔一郎さんが少し顔を寄せて、耳もとでささやいた。

「まわりの人間にも見せつけておかないとな」
「こんな暗いところじゃ見えないと思います……」
「意外と見えるものなんだよ」

 くすと笑う、腰に響くようなバリトン。

「とにかく私が婚約者を溺愛していると印象づけなければ。そういう約束だったろう?」

 甘い声音。
 日光の下に置きっぱなしのアイスクリームみたいに、簡単にとけてしまいそうなわたしの心。

「きみも私に惚れてくれないか? 私なしでは生きていけないようになってほしいんだ」
「え?」
「……そうふるまってほしいということだ」

 そこまで周囲に溺愛を見せつけなければならないものなの……?
 そんなに人の目を警戒しているのかしら。
 翔一郎さんの真意はよくわからない。
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