その狂女、ミイラ女と化す
よく見ると、やつは目を閉じている。

「なんで、目を閉じたの? 普通は逆でしょ?」

目をうっすら開くが視線をまったく合わさない。

「やっぱり、わたしみたいなブスとじゃできないか」


やつは首を震わせながら、わたしの唇にキスを、した。

重なるふたつの唇。

わたしは、されるがまま。

だけど、やつの唇も微妙にしか動かない。

これじゃ、マネキン同士のキスと同じ。

何もドキドキしない、

感じない、

伝わらない。
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