ダークグリーンに魅かれて
今日と君とのことをずっと忘れない
うちの玄関で拓巳くんがかしこまって。

「夕食、ありがとうございました。ケーキまで用意してくださって。すごくおいしかったです」

「また遊びに来てね。おばさん、腕ふるっちゃう」

ママがお茶目に言う。

「ありがとうございます、また伺います」

「じゃあ、行こか、拓巳くん、沙里。本当に三鷹まででいいの?ドライブ兼ねて、国分寺まで行っても良いけど」

「いえ、いくらなんでも遅くなっちゃうんで。また、次の機会に」

兄さんの運転であっという間に三鷹の駅。

「お兄さん、ありがとうございました。沙里、着いたら連絡するよ」

「うん、待ってる」

拓巳くんが駅に入って行くのを確認して、兄さんは再び車を走らせた。

『いい男じゃないか、沙里。離すなよ」

「うん、ずっと一緒に居たい人だよ」

「そっか」

「うん」

兄さんは、元カレの一件で私が深く傷ついたのを知っている。きっと、きっと、拓巳くんとなら大丈夫だ。

家に着いて、私はお風呂に入っていた。カモミールの香りのお湯。は~あ、きょうはいろいろあったな。まさか、私にあんなイケメンな彼氏が出来るなんて。しかも、家族にまで紹介して。

そんなことを考えながら入浴していたら、思いがけず長風呂になってしまった。お水を飲んで、歯を磨いて2階に上がる。兄さんの部屋をノックする。

「隆司兄さん?寝ちゃった?」

一瞬の間があって、ドアが開いた。

「今、寝ようと思ってたとこ。優希に報告してた。お前のイケメン彼氏のこと」

「ふつりあい、かなぁ?」

兄さんがふわっと私を抱きしめる。

「沙里は可愛いよ。自分に自信持ちな。僕の友達でも沙里のこと狙ってた奴ら結構いたんだ・・・けど、僕がガードしてたから」

「ホント?」

「ホントもホント。だから、自信もって拓巳くんの隣にいろよ」

「うん。きょうはありがと。あやすみ」

「おやすみ。あいつとの連絡はほどほどにしてねるんだぞ」

「りょーかい、隆司兄さん」
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