そんなの関係ないよ!
2人が帰って、ラッピングを頑張った。2人は100均のラッピングバッグに入れるようだったが、私はキッチン用バッグに手芸用ボンドでハート形に切ったフェルトをつけようと悪戦苦闘していた。

トン、トン、とノックの音がした。

「はーい!!」

ドアを開けると母が心配顔で立っていた。

「どうしたの?」

「亜里沙・・・明日は亨くん、多分たくさんチョコレートもらうわよ」

「わかってる」

もと陸上部は人気だ。

「だったら・・・」

「だから、負けられないんじゃない。ただでさえ、年齢のハンデがあるんだから、積極的に行かないと」

「亜里沙は強いね・・・」

ギュッとハグをしてくれた。

翌日の午後7時、私は岸川家のチャイムを押していた。

「はい」

と出たのは亨兄。えっ、いきなり本人?

「亨兄、に渡したいものがあって」

「えっ、もしかして甘いやつ?ちょい、待ってて」

しばらく待っていると私服に着替えた亨兄が出てきた。

「ぷっ、ぷりーず びー まい ばれんたいんっ!」

'With my pleasure'

亨兄が笑顔で言った。えっ・・・?うぃず・ぷれ・・・?

亨兄が、私の髪をくしゃくしゃっとやって、

「英語で告白するなら、答えもチェックしとけっつーの。喜んで、って意味だよ」

微笑(わら)った。

「でも、でも、ほかの女の子は?たくさんの、チョコレートは?」

亨兄がちょっとうつむいて、横を向いて。

「僕は、ほんとに好きな女の子からしかチョコレートもらわないって決めてるの。だから、これが僕のファーストバレンタイン。全く、待たせやがって」

ファーストバレンタインが私・・・?ホントに?

「とりあえずしばらくは、手、出せないけど・・・いろいろ遊びに行ったりしような?」

「うんっっ!!」

私は亨兄の胸に飛び込んでいた。しっかり、がっしりと抱きしめてくれた亨兄。でも、今はここまでね。私はいつまで亨兄を待たせればいいんだろう。
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