そんなの関係ないよ!
土曜日。やけに早く目が覚めてしまった私は、亨兄とのデート服を選んでいた。デート服、と言っても、大したものを持っているわけではない。ただ、亜里沙はかわいいもの好きで、「週末用」にaxes femmeでおしゃれ服を何着か買ってもらっていた。その中から、紺色のベロアのフリルワンピースを選んだ。それにコートを合わせる。朝食のときに汚すといけないから、お手伝い用に買ってもらったエプロンを付けてテーブルにつく。

「亜里沙、今日は何かあるのか?」

と不思議そうなパパ。

「うん、ちょっと・・・隣の亨兄と駅前のバーガーショップに行くの」

「亨くんの合格祝いですって。すごいわよ、亨くん、星雲高校に行くことになったんですって」

ママも興奮気味だ、お隣さんとはいえ、6年生のときから見ていた亨兄は母にとっても我が子同然なんだろう。

「それはすごいな。岸川さんに連絡して、一緒に夕食でも食べて我々もお祝いしよう。合格祝いは何がいいだろう」

パパも嬉しそうだ。

「そうねぇ。花束と・・・入学祝いとして、図書カードでもあげればいいんじゃないかしら。とりあえず、今はお祝いね」

「じゃあ、亨兄に都合聞いとこうか?」

「そうね、お願い」

朝食を終えるとぽっかり時間が空いてしまった。菓子箱に入った手紙の山を見つめる。会えないあいだ、亨兄を想って書いた手紙たちだ。2人が、「つきあっている」とは知らないおじさんやおばさんのことを思い、ポストに投函できずにいた。

「これ、亨兄に渡したら、引くかな」

10数通の封筒を見て、ひとりごちた。重すぎる彼女になりたくはないけれど、込めた思いを受け取ってもらいたい気持ちもある。

迷った挙句、持っていくことにした。合格祝いを何も用意していない分、その代わりといってはナンだけど。
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