離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
プロローグ
初めて足を踏み入れた部屋、広くて程よい硬さのベッド、視界には白い天井、暖色のダウンライト。そして見惚れるほど整った顔をした男。
「今日から俺たちは夫婦だろう?――そして、今夜は初夜だ」
「……!」
何も、間違っていない。覆いかぶさるように自分を両腕、両足の間で捕らえている男は紛れもなく今日から自分の『夫』になった人だ。
でもそれは、婚姻届けを提出したというだけ。惹かれ合って交際した延長でも愛し合った結果でも無い。
固まったままでいると彼の冷ややかな声が降ってくる。
「まさか、俺に抱かれるとは思っていなかったという顔をしているな」
「だって……私たちの結婚は契約的なものですし、剣持先生とこういうことをするとは思っていなくて……」
言い訳するように答えながら、彼から視線を外す。
「今日から君も『剣持』だろう、凛音――それに」
深みのある低い声に少しだけ苛立ちが滲んでいるように感じるのは気のせいだろうか。
凛音は彼の表情を伺おうとしたが、確認する前に彼は逞しい上半身を屈め、彼女の耳元で短く宣言する。
「初夜に妻を抱かないという選択肢は、俺には無い」
「剣持せん――」
頬に手を添えられたと思った刹那、凛音の唇は彼に塞がれる。
「ん……っ」
驚きに身を固くする凛音に構わず彼の手は凛音の顔を固定したまま、その唇は角度を変え、徐々に深まっていく。
凛音にとって初めてのキスだった。
「今日から俺たちは夫婦だろう?――そして、今夜は初夜だ」
「……!」
何も、間違っていない。覆いかぶさるように自分を両腕、両足の間で捕らえている男は紛れもなく今日から自分の『夫』になった人だ。
でもそれは、婚姻届けを提出したというだけ。惹かれ合って交際した延長でも愛し合った結果でも無い。
固まったままでいると彼の冷ややかな声が降ってくる。
「まさか、俺に抱かれるとは思っていなかったという顔をしているな」
「だって……私たちの結婚は契約的なものですし、剣持先生とこういうことをするとは思っていなくて……」
言い訳するように答えながら、彼から視線を外す。
「今日から君も『剣持』だろう、凛音――それに」
深みのある低い声に少しだけ苛立ちが滲んでいるように感じるのは気のせいだろうか。
凛音は彼の表情を伺おうとしたが、確認する前に彼は逞しい上半身を屈め、彼女の耳元で短く宣言する。
「初夜に妻を抱かないという選択肢は、俺には無い」
「剣持せん――」
頬に手を添えられたと思った刹那、凛音の唇は彼に塞がれる。
「ん……っ」
驚きに身を固くする凛音に構わず彼の手は凛音の顔を固定したまま、その唇は角度を変え、徐々に深まっていく。
凛音にとって初めてのキスだった。
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