離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 しかし、看護師の水上に特別室で迫られ辟易していた時、勇ましく乗り込んで来た凛音に『剣持先生もさっさと結婚されたらいいんじゃないですか?』と言われた暁斗は『じゃあ、君が結婚してくれればいいじゃないか』と自然に思ってしまった。

 そしてこの契約結婚を凛音に持ちかけたのだ。

 咄嗟に思いついた事だったが、お互いにメリットがあるいいプランだと思ったのだ。

 この形の結婚なら、彼女を助ける事が出来るし、暫くは自分のペースをみだされずに、外野も黙らせることが出来て好都合だ。

 いつまで続けるか分からないが、離婚する時には彼女に慰謝料としてまとまった金を渡せばいいだろうと考えた。

 それなのに、入籍当日から、あくまで『家政婦です』という体で夫婦として暁斗と関わろうとしない意思が見え見えだった凛音に苛立ちを覚え、自室で強引に組み敷いてしまった。自分でも驚く行動だった。

(……今思えば、俺はただ拗ねていただけだな)

 こちらから契約結婚を持ちかけた癖に、彼女に一線を引かれるのが嫌だったのだ。

 彼女が初めてだと知っても止めるどころが、自分が無垢な彼女の初めての男になる事に薄暗い喜びさえ覚え、そのまま抱いた。

 そんな最低な男の為に凛音は献身的に日常生活全般をサポートしながら仕事を続け、時には看護師たちに妻として正面から対峙する。
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