離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 世話好きのしっかり者なのに、好きなものや初めて見るものに少女のように目を輝かせ、ベッドでは暁斗の腕の中で甘く蕩けた女の顔になる。

 気づけば暁斗は凛音に心奪われていた。

 彼女は弟の為にこの結婚を受け入れて、妻の役目をしているだけ。
 抱かれるのも義務だと思っている事も分かっている。それでも良いと思うほど彼女との日常は大切に思えたのだ。

 自分のせいで彼女が悪く言われるくらいならと思い、仕事は出来る限り調整して家に帰るようにした。
 これは、仕事を人生の最優先としてきた暁斗にとっては革命的な出来事だった。

 今まで家族の為に生きて来た凛音が、彼女自身に目を向ける事が出来るようにと、一緒に服を買いに行ったり、パンを焼くためのオーブンを手配したりと、自分でも驚くくらい彼女の為に何かしたいと思った。

 銀座でのデートを切掛けに凛音は以前に増して服装やメイク、髪型にも気を遣うようになった。
 それは『剣持の妻』として必要な事だと思ってやっていることかもしれないが、暁斗は彼女自身の為に着飾る事を楽しんで欲しいと思っている。

 女性の服の事など良く知らない暁斗が同期の医師に紹介してもらったブランドは、彼女の本来持っている可愛らしさと25歳という年齢に合う上品さを引き立てていて、とても似合っていた。
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