離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~


 暁斗が弁当を食べ終わろうとすると、福原が呟いた。

「僕も家族とは縁が薄くてね、凛音ちゃんのお母さんが『はとこ』だったことは偶然知って驚いたんだけど、米田の人たちは辛い状況でもお互いを優しく想い合ういい家族でね……お母さん、助けてあげたかったよ」

 いつも明るいはずの声のトーンが低く落ちている。彼が凛音や遼介を大事に思っている気持ちは本物のようだ。

「……凛音はいつも『洋一郎先生には感謝してる』って言ってます」
「うん、わかってる……僕、凛音ちゃんみたいな子は幸せにならなきゃいけないって思ってるんだ」
「福原先生」

 言われなくても凛音の事は自分の手で幸せにするつもりだ。近々想いを伝えて、彼女が受け入れてくれるのならこの結婚期間を無期限にすると暁斗は考えていた。
 そして彼女が安心して笑顔で過ごせる家庭を作りたい。彼女の笑顔を見れば自分は幸せでいられるのだから。

 凛音と出会う事によって暁斗は今まで考えもしなかった幸せの形を知った。

 そういう意味ではこの『縁結びの神』にも感謝しなければならないのかも知れない。
 彼がいなければ、こうして凛音と結婚することもなかっただろう。だが、と暁斗は思う。

(俺たちの結婚が普通でないと言う事を、この男が気づいていない訳は無いだろう)

 そしてそれを承知で凛音を暁斗に託しているのだ。
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