離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「……幸せにしますよ」

 暁斗は低く、でもはっきりと宣言する。

 福原は人の好さそうな目を少し見開いた後、ふう、と安堵のため息ついて言う。

「そうか……良かったよアッキー、あのままだと凛音ちゃん夜の仕事に就くか、変な所から借金しかねなかったじゃない?そうなる前に僕と結婚してもらうしかないかなーって思ってたから……って冗談冗談!そんな今すぐ殺してやるって顔で睨まないでよ。ただでさえ迫力ある顔してるのに、あーもうっ、今の所は一応上司でしょ!」

 暁斗から射殺さんばかりの視線を正面から受け、福原は大げさに身を縮こませている。いつもの調子に戻ったようだ。

「あー怖い……そういえば、いよいよ来月山海から美(み)咲(さき)先生が来るから、受け入れよろしくね。心外の人手が増えて何よりだよ」
「はい、確かにそうですね」

 表情を戻し、暁斗は静かに頷く。
 今度受け入れるのは暁斗の大学の同期で優秀な医師だ。心臓血管外科は今以上に先進的な医療を多くの患者に提供することが出来るようになるだろう。
 人手が増え、暁斗の負担も減れば凛音と過ごせる時間も多く取れるようになる。良いことばかりだ。

(しかし、また仕事以外の事で振り回される事になりそうだな)

 大学時代からの彼女の想いを知っている暁斗は、少し面倒な事になると感じ、心の中で溜息をついた。
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