離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 凛音の作るパンを暁斗はいつも美味しいと言って食べてくれる。だからつい調子に乗って作り続けてしまうし、こうして届けたくなってしまう。

 もし忙しそうだったら受付に預けていこうと思いながら廊下を歩いていると、ちょうど向こうから目的の人達がやって来た。
 暁斗に福原、それに見慣れない若い女性、白衣を着ているので医師だろう。

「お疲れ様です」

 声を掛けると、「あ、凛音ちゃん!」と福原が反応する。
 どうやら立て込んでいないようなので、凛音は彼らに近付いて行った。
 白衣を着た3人の医師が目の前に並ぶと、慣れているとは言えなかなかの迫力だ。

 ちょうど良かった、と言って、福原は彼の横に立つ女性を凛音に紹介した。

「彼女は寒川美咲(さむかわみさき)さん、今日から心外の担当医師として、ウチに入る事になってる。慣れるまではアッキーと組んで勤務してもらう事になっているから」
「寒川です、よろしくお願いします」

(うわーすごい綺麗な人だなぁ)

 紹介された彼女――寒川美咲は目を奪われるほどの美人だった。
 薄化粧でも元々の顔立ちが整っているので派手に見える。

 緩くウェーブのかかった栗色の豊かな髪をサイドで結んで流している。すらっとした長身で、腰が高い位置にあり、白衣を着ていてもプロポーションが良いのがわかるくらいで、まるで医療ドラマに出てくる、カリスマ女性医師のような雰囲気だ。
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