離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました～契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる～

「医事課の剣持凛音です。よろしくお願いします」

　美しさに圧倒されながら、凛音は自己紹介をする。

「――剣持？もしかしてあなたが暁斗の？」

　凛音の苗字を聞いた途端、彼女の気の強そうな目元に鋭さが生まれた気がした。

（……暁斗？）

　彼女が暁斗、と夫の名前をの呼び捨てをにした事に凛音は反応してしまう。

「そうそう、この可愛いお嬢さんが、剣持先生の愛妻。医事課に勤めながら夫を支える出来た嫁なんだよね。しかも料理上手」

　福原は凛音が答える前に勝手に余計な情報ををプラスして説明してしまう。

「……そう」

　福原の明るい声に対して美咲の声が堅いような気がする。

「凛音、今日は休みじゃなかったのか？」

　暁斗に声を掛けられ、凛音は忘れかけていた本来の目的を思い出した。

「あ、はい、休みだったんですけど、クロワッサンを焼いたので、食べて貰おうと思って持ってきました」
「そうか、ありがとう。休憩の時に食べるよ」

　暁斗は表情を和らげると凛音から袋を受け取る。