離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 歩きながら独り言が出てしまう。

 でも、どう聞けばいい?『寒川先生は元カノで本当は彼女と結婚したかったんですか?』なんて聞けるわけがない。

(もし、聞いてそうだと言われたら……)

 どう考えても自分は邪魔な存在という事になる。考えれば考えるほど凛音の足は重くなっていった。


 幸か不幸かそれから数日、当直や緊急手術が続き、暁斗と顔を合わせる時間は短くて済んでいた。話す時間があったとしても、どう切り出していいか分からないのだけれど。

 凛音は今日も当直の暁斗に夜食を届けるため、車で病院に向かう。

 徒歩10分の距離でも車を使うのは、夜は絶対にひとりで出歩くなと暁斗に言われ、彼が凛音用に女性でも運転しやすいというコンパクトカーを一台車購入したからだ。
 たしかに小回りが利いて非常に運転しやすくて気に入っている。

 ここの所、身体が怠いし食欲も無い。体力が落ちている気がするので、車があって良かったと思う。

 病院まで5分足らずで到着し、いつものように病院の地下駐車場に車を停める。直接エレベーターで病棟に上がる……はずだったのだが、止まったのは3階だった。

「何やってんだろ、私……」
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