離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~

 定時後、凛音は人気の無い医事課内の窓辺の椅子に座って野菜ジュースを飲んでいた。

 今日こそ暁斗に切り出さなければと思うが、そう思うと帰りたくなくなってくる。

(こんな事じゃ駄目だ、よし、帰るぞ!)

 いつまでもズルズルと引き延ばしたら、その分、暁斗と美咲が辛い思いをするだけだ。

 凛音が心の中で自分を叱咤し腰を浮かそうとしたところで、会議から戻って来た博美がそのまま凛音の横に座ってきた。

「りーねちゃん」
「おかえりなさい。博美さん……どうかしました?」
「もしかして、剣持先生と喧嘩でもしてる?」
「え?」

 博美は丸い顔をニコニコと綻ばす。

「実はね、今日剣持先生と会ってね、凛音ちゃんがの元気が無いって話をされたのよ。びっくりしたわよ。あのクールな先生が不安そうな顔で私に相談してくるんだもの。天変地異の前触れかと思って怖くなったわ」
「なんだかすみません……私たちの事で。別に喧嘩している訳じゃないんです。ちょっと私の体調が悪くて……」
 
 凛音は居たたまれなくなり肩を竦める。暁斗が博美に相談していた事も驚きだ。
< 122 / 170 >

この作品をシェア

pagetop