離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「実はさ、私も凛音ちゃんの最近の様子見てて気になってたんだけど……」

 周りに人はいないのだが、更に声を低くして博美は言う。

「ね、おめでただったりしない?」
「え……」

 凛音は一瞬何を言われているか分からずにポカンとしてしまう。

「おめでた……?」
「そう、もしかしたらと思って」

(――妊娠、した?私が?)

 そういえば、今月生理は遅れていた。でも元々不順だったし、心労のせいだろうとあまり気にしていなかった。

 凛音を抱く時、彼はいつも配慮してくれていた。でもただ一度だけ、あの台風の夜だけは……。

 突然自分の体に新しい命――暁斗の子供が宿っている可能性を知り、無意識に凛音の手は腹部を押さえていた。

「剣持先生も、凛音ちゃんが食欲無くて、怠そうで、パンも焼く気にならないようだって言うし、最近の凛音ちゃんの様子と合わせそう思ったんだけど……普通医者なら最初にそこを疑うと思うけどねぇ、一流のドクターも奥さんの事だと冷静になれないのかしら」

「……あの、博美さん」
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