離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 今日、自分が妊娠した可能性が高いことを知った凛音は、まず戸惑った。それは自分の体の中に新しい命が存在している事の重大さに恐れを抱いたからだ。

 でも、落ち着いてくると、すぐに純粋に嬉しいという気持ちが湧いてきた。
 愛する人との子供が自分の身に宿っているのだ。こんなに幸せな事は無い。何かがあっても産みたいと思った。

 ――でも、他に愛する女性がいる暁斗にとって、これは幸せな事なのだろうか。

 正直に話したら、彼はどう思うだろう。客観的には、新婚夫婦に子供が出来たのだから喜ばしい事だろう。それに、彼は優しいからこのまま結婚生活を続けると言うかもしれない。

 それでは暁斗と美咲の仲を子供を理由に引き裂いてしまう事になる。

 片方だけが好きでも結婚生活は不幸になるだけだ。お互いが想い合う相手と結婚した方が良いに決まっている。

 そこまで考えて、凛音は思った。そもそも暁斗に自分の気持ちを伝えていない。好きですとも、ちゃんとした夫婦になりたいとも言っていない。

(――うじうじ考えてないで、ちゃんと言おう。あなたが好きです。お互いを想い合う本物の夫婦になりたいですって)

 きっと暁斗に想いは届かないだろう。それでいい。ちゃんと終わらせることが大事なのだ。その後は子供の事は知らせず、すぐに離婚して暁斗の前から姿を消そう。
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