離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 黙って子供を産むなんて今の状況で出来るかなんて分からない。
(九王も出なければならないし、今の仕事も続けられなくなる。東京を出て仕事を探そう……大丈夫、母は強いんだから。何とかなる)

 なるべく具体的に、やるべき事を考えていく。そうすると凛音は前向きになれる気がした。

 しばらくすると、凛音の背後で暁斗の静かな寝息が聞こえて来た。後ろから抱きしめるように回っている彼の手は偶然にも凛音のお腹のあたりに来ていた。

 凛音はその手の上に自分の手をそっと重ね、目を閉じた。



 翌朝、凛音はすっきり目覚める事が出来た。
 腹を括ったせいか、気分も良くなり、昨日より食欲もある。

 もしかしたら、妊娠を知った自分の体がちゃんと食べるように指令をだしているのだろうかなどど考えて凛音は一人微笑む。

「今日は調子が良さそうだな」

 凛音がすっきりした顔をして朝食を食べているのを見て、暁斗も安心した顔をしていた。

「心配かけちゃってすみません……もう、大丈夫です」
「でも、まだ顔色はあまり良くない。くれぐれも無理はするな」
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