離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「はい、気を付けますね」

 先に朝食を食べ終えた暁斗は立ち上がると食器を流しへ運び、コーヒーを入れ始めた。

「――凛音、今夜はなるべく早く帰るようにする。昨日みたいに急患が入ったらそうもいかないかもしれないが……でも、ちゃんと君に話しておきたい事があるから」

 暁斗の真剣な口調に凛音の胸はドキリとする。

(そっか、いよいよ離婚を切り出されるんだ)

 凛音はニッコリ笑って答える。動揺を悟らせないように。

「わかりました。ちょうど良かった、私もお話したい事があるので、その時に聞いてくださいね」
 結果は同じでも、自分の想いだけは伝えさせて欲しい。今夜、彼が話し出す前に切り出してしまおうと凛音は思った。

 暁斗を送り出した後、凛音はいつも通り出勤し、いつも通り業務を進めていく。

 博美は凛音から話すまで、妊娠のことは聞かないでいてくれるつもりだろう。
 特に触れてこようとしない。その気持ちがありがたかった。
 でも、博美に妊娠の事実を知らせる訳にはいかない。暁斗に知られてしまう可能性が高くなるからだ。
 あんなに心配してくれて気遣ってくれているのに、本当に申し訳ないけれど、違っていたと嘘をつくしかない。
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