離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「……暁斗さんは、喜んでくれますか?」

 言ってしまった。暁斗、そして美咲の反応が怖くて、俯いた顔を上げる事が出来ない。

 すると凛音の起こしていた上半身が椅子から立ち上がった暁斗に包まれる。

「この世で一番愛している女が俺の子を産んでくれるんだ。嬉しくないわけないだろう!」
「えっ……?」

(愛してる女……って、私の事?暁斗さんは寒川先生が好きなんじゃないの?)

 彼の言葉に凛音の心臓が早鐘を打ち始める。

「嬉しいに決まってるって言ってるんだ。凛音、本当に俺たちの子供が出来たのか?」

 凛音の頭を掻き抱くようにしながら暁斗は続ける。押し付けられた白衣の胸から彼の心臓の音もトクトクと早まっているのが伝わってくる。

 その鼓動を信じたいと思った。

「……はい」
「そうか……ありがとうな」

 暁斗の声が一瞬震えたような気がした。

 しばらく彼は凛音の頭を優しく撫でていたのだが、後ろから福原のわざとらしい咳払いが聞こえて来て、彼は渋々体を離す。

「凛音ちゃん、良かったねぇ。天国のご両親も喜ぶよ」

 うんうんと頷きながら笑う福原の横で美咲が呆れた声を出す。

「でも、暁斗も鈍いわね。奥さんの様子見てわかんなかったの?」
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