離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 暁斗と美咲は同時に声を上げる。ふたりとも心底嫌そうな表情だ。

「だから、ふたりの為には言わない方がいいって思って……」

 凛音の声がどんどん小さくなる。

「凛音、何をどう誤解して、そういう結論を勝手に導き出したか知らないが、俺と寒川は恋人だったたことは無いし、もちろん今もそういう関係は無い。一切だ」
「ホントそうよ。勘弁してほしいわ――だって私、」

 美咲が言いかけた所で福原が割り込んでくる。

「そうだよ、凛音ちゃん。この二人、付き合いは長いがあくまで大学の同期としての悪友なだけだ。九王の医者から出入りの営業まで、恋愛事情を不倫も込みでくまなく把握しているこの僕が言うんだから間違いない」

 しばらく彼らの言葉を聞いていた凛音は改めてベッドの上で脱力する。

「そう……だったんですか……」

 はぁ、と溜息を付くと、それと同時にひとりで抱えていた様々な重荷が一気に軽くなるような気がした。

「良かった……誤解して、ごめんなさい」

 安心感から気が緩み、涙声になってしまう。

 暁斗は凛音を落ち着かせるように、再び頭をゆっくりと撫で始める。

 勝手に誤解してこんなに悩んでしまった事に、暁斗にもお腹の子にも申し訳ない気持ちになる。
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