離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 それも、ちゃんと自分の気持ちを彼に伝えていなかったせいだ。

 今彼が自分に伝えてくれたように、自分もちゃんと彼に伝えなければ。

(洋一郎先生や寒川先生がいるけど、この際関係ない)

 凛音は、「あの!」と切り出そうとしたのだが、暁斗は撫でていた手を止めると急に思いついたように言う。

「そういえば、医者には診せたのか?」
「あ……いえ、まだです。わかったのが昨日だったので」

 勢いを削がれた凛音が戸惑いながら答えると、暁斗は2人の医師を振り返って言う。

「――今日の産婦人科の担当医は?」

「えーっと、たしか、結城先生だけど、さっき長時間のお産が無事終わって、疲れたから仮眠するわって休養室に向かった気が……」

 福原が最後まで言う前に暁斗はすくっと立ち上がる。

「すぐに診て貰おう、呼んでおくから、凛音はこのままここで休んでいてくれ」
「え、アッキー?僕の話聞いてた?」
「わかったわ、奥様には私がつきそっておくから」
「頼む」

 暁斗は凛音を美咲に託すと颯爽と病室を飛び出し、福原は慌ててバタバタとその後を追って行った。
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