離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「でも、あの時、寒川先生は山海にいた時からずっと好きだったとか、アメリカに行っても忘れる事なんて出来なかったとか、今更諦めるなんてできないって仰ってた気がします。それで暁斗さんの事かと」
「……ほんとまあ、よく聞いてたのね」

 美咲は白衣のポケットから手を出してベッドに肘をついて両手で顔を隠しているではないか。
 おまけに耳が赤い。

(え、うそ、寒川先生がものすごく恥ずかしそうにしている)

 気が強くて、言いたいことは躊躇せず言うという印象の彼女が照れまくっていることに驚きを覚える。

「……私が好きなのは、暁斗みたいに、同年代のちゃんとした男じゃなくて、年上で明るくて優しくて、でも本当は裏のある腹黒タイプなのよ」

「そ、そうなんですか」
「でね、山海にいた時に講師だったその先生に一目ぼれして、13も年下の女なんて相手にしないって思いながらも忘れられなくて、諦められなくて、九王に来たかったの。同じ外科にいれば接点も増えるって思って」

 もちろん九王の心外が魅力的だから入職を決めたんだけどね、と彼女は付け加える。

 こんなに美しくて完璧な彼女をここまでさせる男性とはどんな人だろうか。凛音は心当たりの医師のデータを頭から引っ張り出す。

(13歳年上、という事は45歳。で、ウチの外科医……)
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