離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 しばらく考えると、ひとりだけそれに該当する人物がいた。

「……え、まさか洋一郎先生!?」

 思わず素っ頓狂な声が出てしまったが、美咲の赤い顔がそれを肯定する。

「ずっと好きなのよ。福原先生が」

 言われてみれば、福原も暁斗や美咲と同じ山海の出身だ。
 美咲はそこで講師として知り合った福原にずっと片思いし忘れられなかったらしい。

 もちろん福原は45歳だが独身だし、何もおかしくは無いのだが、あののんびりとした保育園の園長先生キャラの福原に13年下の才色兼備の美咲が……と思うと意外過ぎて、理解が追いつかない。

「でも、洋一郎先生に裏とか腹黒とかっていうのは……」

 ずっと凛音や遼介を見守り、困った時には手を差し伸べてくれた人だ。
 明るくて優しい、というのは同感だが、裏とや腹黒とか言われると凛音にはピンと来ない。
 
 そう主張すると美咲はニッコリ笑って「いいのよ凛音ちゃん。あなたはそれで」と解せない事を言う。

「福原先生が昔から可愛がってる親戚の子がいるのは知ってたし、その子が暁斗と結婚したことも知ってたんだけど、福原先生があなたを可愛いって手放しで褒めるからつい、嫉妬しちゃったのよ。初めて会った時、私、睨んじゃったでしょう?」

 初めて自己紹介した時に感じた嫉妬の視線は、暁斗の妻に対してではなく、福原の可愛がっている女の子に対してのもので、完全に自分の勘違いだったのだ。

「そうだったんだ……」
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