離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「本当は……寂しい、寂しいです。だって暁斗さんの事大好きだし、もっと一緒にいたい……今日だって帰って来てくれなかったら悲しかった。でも、やっぱり暁斗さんには待ってる患者さんがいっぱいいるから、そんな我儘言っちゃいけないって……」

 凛音は自分の気持ちを初めて口に出してしまった。

「あぁ、そうだな。言わせて悪かった」

 ずっと跪いていた暁斗は立ち上がると凛音の横に座り、指先で凛音の涙を拭ってくれる。

「でも、そうやって我儘を言ってくれると俺が嬉しいんだ。もっと言いたいことを言っていい。俺が出来る事はなるべく叶えるようにする」

 凛音が涙目で暁斗を見つめると、彼は物凄く嬉しそうな顔をしている。そんなに寂しいと言われたのが嬉しいのだろうか。他人にペースを乱されるのをあれだけ嫌っていたはずの人なのに。

 でも、自分がこの顔を引き出しているのだと思うと、凛音は嬉しい気持ちでいっぱいになる。

「はい、わかりました!これからは素直にもっと言いたいこと言っちゃうようにします」
「あぁ、そうしてくれ。――それで?」

 暁斗は凛音の頬を撫でながら聞いて来る。

「はい?」
「プロポーズの答え貰ってないぞ」
「あ!」
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