離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 凛音の所属する医事課の課長で、上司にあたる。ふくよかな体形で『お母さん』といった印象だが、実際息子を2人育て上げている。50歳を超えていて、家庭と両立しながら勤務歴は長く、この病院の事は何でも知っているし、医師や看護師からの信頼もあつい。

 彼女が厳しくも優しく指導してくれたおかげで凛音はここまでやって来れたと言える。

「外科の医局に行って剣持先生にこれ渡して来てもらいたいの。さっきメーカーさんから受け取ったんだけど、私夕方まで派遣業者との打ち合わせが入ってて」

「はい、わかりました。急ぎですか?」

 聞けばアンギオと呼ばれる血管造影装置のカタログが数種類入っているらしい。
 九王総合病院では既にアメリカ製の最新装置が導入されているが、暁斗は常に他社も含めた最新情報を入手しておきたいらしい。

 メーカーのホームページにも同様の情報は掲載されているが、どうやらカタログの方が比較もしやすく良いようだ。紙で見比べたいという感覚は凛音にもわかる気がした。

 暁斗は外科の専属クラークをしていた事のあるベテランの博美は信頼しているらしく、今も何かと頼み事をしているらしい。逆に言うと、今のクラークは信用していない事になるが。

(確か、外科のクラークは若い女性だもんね、しかも剣持先生をロックオンしてるっていうし)
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