離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 病室を使うのはどうかと思うが、これは告白現場だ。しかもどうやら水上はたった今、振られたらしい。
 偶然とは言えそんな場面をこっそり聞いてしまっているのはよろしくない。

(うわー、見つかったら気まず過ぎる)
 
 ふたりに気づかれないようにこの場から去ろう――と、凛音は泥棒が逃げ出すように方向転換してこっそりと足を踏み出そうとしたのだが……。

「それって、本当なんですか? だってその相手のこと誰も知らないし、実際、先生結婚してないじゃないですか……でも本当でも構いません」

(え?)

 思わず凛音は中の様子に釘付けになる。
 水上は話しながらベッドに腰掛け、前開きの看護師の制服のボタンに手を掛けて外しに掛かっている。

「――どういうつもりだ?」

「剣持先生……」

 一層冷たくなる暁斗の声に構わず水上は前をはだけて下着が見えるようにし、甘えた声を出す。まるで触ってくださいというような態度だ。

(こ、これは、色仕掛けというやつ……?)
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