離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
ー3ー
 翌日、仕事が終わった後、凛音は暁斗と改めてふたりで会う事になった。

 あの後『今は仕事中だから別の日に話をしないか』と言われた流れで連絡先を伝えた所、早速夜に携帯に連絡が入り待ち合わせをすることになったのだ。

 職場から直行したので少々時間より早い。暁斗はまだ到着していないようだ。駅から徒歩五分ほど世界的にも有名な五つ星ホテルのエントランスを凛音は緊張気味に抜ける。

 指定されたラウンジは木の温もりを感じる明るく割とカジュアルな雰囲気で、思ったより入りやすかった。しかし飲み物の値段は全くカジュアルでは無い。
 窓辺近くの席に座った凛音は懐の痛さに心中涙を流しつつコーヒーを注文し、暁斗を待つ。
 
 暁斗の言葉通り、出勤した凛音は自分が噂の渦の中にいる事を自覚した。昨日の今日だと言いうのに水上がせっせと拡散してくれたらしい。
 きっと自分のやった事には触れず、面白そうなところだけを誇張したのだろう。病院内のネットワークの強さを身をもって感じる一日だった。

 病棟の廊下を歩いていると、看護師からの好奇の眼差しに晒された。昼食を取ろうにも、いつも行っていた職員用の食堂は怖くて行けなかった。

 午後には派遣メンバーを含めた同僚ほぼ全員『剣持先生と米田さんが結婚するらしい』という話を知っていた。

 隙あらば凛音に話を聞き出そうとする同僚たちに話しかけられないようにするのも大変だった。
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