離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
『こらこら、興味があるのはわかるけど、凛音ちゃん仕事出来なくなっちゃうからいい加減にしなさい』と守ってくれたのは医事課長の博美だが、彼女自身にも『事情は後でゆっくり聞かせて貰うから』と不敵な笑みを送られた。怖い。

 とにかく落ち着いて仕事がし辛い状況になってしまっているのだ。昨日は話が中途半端になってしまったが、暁斗に全面的に否定してもらいたいと凛音は思っていた。早ければ早いほどいい。

(なんか『結婚しないか』って言われた気がするけど、アレ……冗談よね。剣持先生ってあんまり冗談を言うような人では無いイメージだったんだけどな)

 冗談にしても面白くないけど、と昨日の暁斗の不可解な言動に考えを巡らせていると、その張本人がラウンジに入って来た。
 凛音に気が付くと長い脚で早足で近づいて来る。スクラブや白衣姿では無い彼を初め合わせてて見る凛音は思わずその姿に見とれてしまう。

 ホワイトのTシャツに長袖のブルーグレーのシャツをサラリと羽織り黒いチノパン、白いレザーのスニーカーを合わせていて若々しい。
 カジュアルな組み合わせなのに、全てのアイテムの素材が高級に見える。身に着けている人間がモデル顔負けの体形をしていて麗しいためだろうか。堂々とした立ち居振る舞いも相まって、高級ホテルのラウンジでも違和感を全く感じさせない。
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