離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 両親が亡くなった事、凛音が大学を中退して働いている事、遼介が医学部の学生で学費に苦労しているだろう事。

 これ以上心配を掛けまいと凛音は福原にお金の事を相談したことは無かったが、恐らくバレていたのだろう。
 結局親切な福原に心配を掛けていた事に凛音は申し訳なくなる。
 でもそれが今の話とどう繋がるのだろう。

「俺と結婚したら義理の兄として彼が卒業するまでの学費を含んだすべての費用はこちらで用意する」
「えっ」
 
 思いがけない提案に凛音は目を見開く。
「恥ずかしながら、お金が無いのは認めます。でも、今の話だと剣持先生に何もメリットが無いじゃないですか」

 ここまで知られているのなら、と凛音は素直に認め、逆に暁斗に尋ねた。

「いや、俺にとってもかなりのメリットがある。昨日君が目の当たりにしたような事は初めてじゃない」
 
 暁斗は去年九王に戻って来て心臓血管外科医として最先端の技術を取り入れようとして精力的に取り組んでいる大事な時期だ。
 仕事を最優先とし、しばらくは女性と付き合うのも結婚をする気も無いにも関わらず、女性からの面倒な誘いが絶えない。
 結婚を考えている人がいると言って断り続けているが、最近はそれも効果がなくなっている。
< 31 / 170 >

この作品をシェア

pagetop