離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 ただ、これまでの残業も厭わないフルシフトは緩めたパートタイマー的な働き方に変えて貰う事になった。それは医師として激務が続く暁斗の生活面をサポートする為である。

「よーし、明日から、いや今日から頑張るぞ!」

 夕方になり、凛音は片付け終えた自室で気合を入れる。
 凛音に与えられたのは暁斗の書斎兼寝室の廊下を挟んで向かい側の部屋だ。

 ベッドだけは事前に準備してもらったが、あとは自宅から持ち込んだ古いチェストや3段ボックスなどが置かれている。
 白くて、広くて綺麗な部屋に安っぽい生活感満載の家具。違和感しかないが、愛着があったし、将来的にここを出る時は持っていきたいと思っていた。

 暁斗は自らが登壇する医学学会発表用の資料作りがあるらしく、自室に籠っていた。

(休日なのに大変だなぁ。いつもそうなのかな)

 凛音は部屋を出てリビングに向かう。暁斗のマンションはあまり生活感が無かった。

 リビングの家具もモノトーンで直線的なデザインで統一されており、キッチンもすっきりしていて一通りの調理器具は揃っているがあまり使われた形跡はない。

(多分こういうスタイリッシュで大人っぽい部屋が、剣持先生の好みなんだろうな。本人のイメージまんまだけど)

 自分はもう少し温かみのある部屋の方が好みだけれど、居候する身なので、とやかく言えない。こんな高級なマンションに一時的でも住まわせてもらえるなんて、ありがたいばかりだ。
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