離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「おじさんもう疲れちゃったよ。でも、凛音ちゃんの顔はを見れたから午後も頑張れるな」
 福原はおどけたように言う。

「ふふ、それは良かったです。洋一郎先生はおじさんじゃないですけどね」
 彼は自分の事をおじさんというが、別に太っても居ないし清潔感もあり、とても45歳には見えない。お医者さんと言うより、温和な雰囲気が保育園の園長先生みたいだと凛音はいつも思っている。
 
 凛音の母の『はとこ』にあたる福原は、母、そして父亡き今、いつも凛音と弟の事を気に掛けてくれている。そもそも大学を卒業できなかった凛音にこの仕事を斡旋してくれたのが彼だった。

遼介(りょうすけ)くんは元気かい?」
 弟の事を聞かれた凛音は内心ドキリとしながら答える。

「はい、医大の勉強はすごく大変そうですけど、頑張っていますよ」
「バイトとの両立だと医大は何かと大変だな……聞き方が悪いかも知れないけど、学費は大丈夫なのかい?」
 正に悩んでいた所を突かれた凛音は、ウッと一瞬口ごもってしまう。
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