離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「……」
 更に暁斗が眉間の皺を深くしているのも気づかず、凛音はバスルームに向かった。

 広い脱衣所は片面の壁が総タイルの設えで、大きな鏡が貼ってあり、さながらホテルのようだ。
 浴室も広く、浴槽も長身の暁斗が足を延ばしても問題ないだろうと思うくらいに大きい。清掃のプロの手が入っていたのだろうか。綺麗に保たれていた。
 ゆっくり機能やタオルの位置などをチェックしてからダイニングに戻る。

 様子を伺うと暁斗は黙々と箸を動かして食べている。食べっぷりは良いのだが、どうも浮かない顔に見える。

「も、もしかして、お口に合いませんでしたか?」

 食事の邪魔はしないつもりだったが、つい不安で聞いてしまう。一応味見はしたが彼の好みの味付けでは無かったかと焦る。

「いや、美味い」
 少しトーンは低いが柔らかさが混じった返事が帰って来る。

(美味しいって言って貰えた!)

「良かった!私、庶民的な料理しか作れないので。、そうだ、好みを教えて頂ければ剣持先生にあった味を作れるように練習しておきますね。あ、食べ終わったらそのままで大丈夫です。片付けておきますから。あと、お風呂入られるようだったらいつでも言って下さいね」
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