離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 単純だと思いつつ、褒められた嬉しさでさらにやる気を増していた凛音。
 この時も、暁斗が何とも複雑な顔をしていることに気付けなかった。

 凛音は暁斗の入浴中に素早く食事を取り、片づけを終わらせる、暁斗が入浴が終わった事を確認して自分も浴室に向かった。

 広々とした浴槽に手足を思いっきり伸ばし、初めて経験するジャグジーにあたっていると一日の疲れと緊張が泡と一緒に飛ばされるような心地良さだ。
 凛音は肩までしっかりと湯につかりながらこれからの事に想いを馳せる。

(――剣持先生は私生活で自分のペースを乱されるのが嫌だって言ってたもんね。だから普通の結婚をしたくなかったくらいだし。私にこの家で期待されているのは家事をこなす事と、存在感を感じさせない事。剣持先生が心置きなく仕事を打ち込めるように、家ではゆっくり休めるような環境にしよう)

 もちろん最低限のやり取りは必要だし、外向きには妻の役割をこなすが、家では快適な生活を提供しつつとにかく邪魔にならないようにしようと凛音は考えていた。

 男性とお付き合いをしたことも無い自分が暁斗と同居なんて出来るかと不安だったが、そう割り切ると気が楽になって、なんとかなりそうだと思えた。

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