離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「後で俺の部屋に来てくれるか?渡したいものがある」
そう言われたのは凛音が風呂を出て自室で寝る仕度をしている時だった。
自室のドアの外から声を掛けられ、ベッドに腰掛けていた凛音は「は、はい!」と返事をして慌てて立ち上がる。
素早く髪の毛を整えて、半袖パジャマの上から薄手のカーディガンを羽織る。
(うーん、ちょっと恥ずかしい格好だけど、しょうが無いか)
一体何だろうと緊張しながら、部屋を出て向かいの暁斗の部屋のドアをノックする。「どうぞ」という声がしたのを確認し、遠慮がちにドアを開ける。
中には上下ネイビーのスウェット姿の暁斗が、タスクチェアに座ってパソコンを操作していた。部屋着でもだらしなく感じないのは何故だろう。
「入って」
暁斗はパソコンから凛音に視線を移すと入るように促してくる。
「……失礼します」
何となく患者として診察室に来た時みたいなやりとりだなと思いつつ凛音は部屋の中に入った。
暁斗の部屋の内部は初めて見る。パソコンや書類が置かれたオフィスで使うようなデスクと暁斗の座っているタスクチェアがあり、本棚には医学書と思われるものがぎっしりと詰まっていた。
まさに仕事をする部屋という雰囲気だが、奥には大きめのベッドが置かれており、彼がこの部屋で大半の時間を過ごしていることがうかがえる。