離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「……このお部屋なんですが、私が入って掃除しちゃっても大丈夫ですか?」
「構わない」
「えっと、でもこのデスクの上にあるものは片付けない方が良いですよね?」
「そうだな、書類とパソコンには触れないで欲しい。それに毎日掃除しなくてもいい」
「は、はい、わかりました」
「他に、質問は?」
「……無いです、が」

 なぜまだ私の手を放してくれないか聞きたい。

 暁斗は指輪を嵌め終わっても凛音の左手を掴んだままなのだ。どう反応したらいいか分からず凛音は俯いたまま固まってしまう。

「じゃあ、こちらから質問させてもらう。君はこの後自分の部屋に戻ってさっさと寝るつもりか?」
「はい、そうですが、まだ、何かやり残してましたっけ」

 今日やるべき家事は終わったはずだ。そう思って答えた。
 
 しかし、彼の言いたいことはそういうことでは無かったようだ。

「妻としての務めはまだ残っているだろう?」
「えっ?」

 掴まれたままの左手がさらに彼の方に引かれたと思うと、そのまま奥のベッドの脇に立たされる。
 肩を押された勢いでベッドにぽすん、と身が投げ出された。
 すると、ベッドに乗り上げて来た暁斗にあっと言う間に組み敷かれてしまった。
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