離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「初夜に妻を抱かないという選択肢は、俺には無い」

「剣持せん――」

 頬に手を添えられたと思った刹那、凛音の唇は彼に塞がれる。

「ん……っ」

 驚きに身を固くする凛音に構わず彼の手は凛音の顔を固定したまま、その唇は角度を変え、徐々に深まっていく。

 凛音にとって初めてのキス。

 息継ぎの仕方なんて分からない。息苦しさに口を開こうとすると、その隙間から酸素では無く彼の舌が侵入してくるではないか。

「は……ん、んっ」

 巧みなその動きに混乱しながらも、凛音の体はゾクリとした感覚を勝手に拾いだす。
 彼女の小ぶりな唇とさらに奥の感触を味わうように動いていた暁斗はゆっくりと凛音の顎を固定していた手と唇を離す。

「もしかして、君は初めてか?」

 凛音は肩で息をしながら真っ赤になった顔を必死に縦に振る。

 こっちは酸欠と羞恥で死にそうなのに、暁斗は息一つ上がっていないように見える。

『だったら、これ以上はやめておこう』という言葉を期待していた凛音だったが――違う言葉が降ってくる。
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