離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 水上と彼女と同年代の看護師がふたり、計3人の視線がこちらを向いていた。彼女たちはこれから夜勤なのだろうか、看護師のユニフォーム姿だ。

 水上と直接話すのは、彼女がVIPエリアの特別室で暁斗に迫っていた時以来となる。

「……お疲れ様です」

 暁斗に体当たりで迫る場面に乗り込んでタンカを切ってしまった凛音の事を水上が良く思っていないのは確かだし、こちらもあまり会いたく無かったなと思いながら凛音は挨拶をする。

「結婚しても、相変わらず地味なのね」

 水上達はふふん、と蔑むような視線を凛音に投げてくる。こういう時女の集団というのは厄介だ。
 凛音の服装は結婚前から変わっていない。愛用のファストファッションにあっさりとしたメイクだ。

 暁斗は十分すぎるほどの金額を凛音専用口座に振り込み、好きなように使っていいと言ってくれている。
 しかし凛音は自分の事で無駄遣いをしたく無いし、妻の見た目に興味が無いのか彼が自分の服装について何か言ってくる事も無い。だから気にしていなかった。

(暁斗さんの妻としてもっと着る服に気を遣わなきゃいけなかったのかも)

 彼のパートナーになった時点で、自分の立ち居振る舞いやファッションが彼の評判に関わる事もあるのではないか。
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