離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「暁斗さん!」

 暁斗は驚く凛音たちに構わず言葉を続ける。

「事務職員がいなければ、外来受付や精算やあらゆる処理が止まり、病院なんてものの30分で機能しなくなるだろう?医師だろうと看護師だろうと事務だろうと病院(ココ)に欠かせないと人材と言う事は変わらない。それくらいの想像力は持ってもらいたいんだが」

 思わず委縮してしまいそうな冷たい声に水上達も何も言えなくなってしまっている。

「暁斗さん――」

 暁斗はちらりと凛音を見た後、水上たち看護師に向き直り、少しだけ声色を和らげる。

「もちろん、君らも病院に必要不可欠な存在だと思っている――頼りにしているからこれからもよろしく」

 固まっていた彼女たちは暁斗の言葉にぽかんとした後、我に返ると「は、はい!」と頬を染めている。
 普段クールな彼に『頼りにしているからよろしく』と言われたらときめいてしまうのは無理もないのだが、「じゃあ、勤務に戻りますね!」と足取り軽く去っていく姿を見て、現金だなあと凛音は思った。
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